ヒストグラム上の正規曲線は、プロジェクトCTQの測定値の推定分布を表します。CTQ(Critical to Quality)は、製品または工程の測定可能な主要特性のうち、顧客を満足させるためにその性能規格が満たされていなければならないものを意味します。CTQには、製品またはサービスに関連する変数や、上側規格限界および下側規格限界を含むことができます。
工程平均と工程標準偏差の長期(LT)および短期(ST)の推定値からこれらの曲線が計算され、LTとSTの正規曲線として表示されます。ほとんどの場合、LT正規曲線の幅はST正規曲線より広くなります。
規格限界(LSLおよびUSL)により、参照点が与えられます。目標値(望目特性)は、必ずではありませんが、通常は下側規格限界と上側規格限界の中心に位置します。平均値が目標値に近くなることが理想です。上の例では、工程平均は目標値にきわめて近い位置にあります。
LT正規曲線は工程平均から計算されます。ST正規曲線に関する詳細は、工程レポートの短期統計量の値の中心位置の決定方法を参照してください。
このプロットでは、LT(長期)とST(短期)に対するデータの各サブグループの後の推定累積DPMO(100万機会あたりの欠陥数)が表示されます。まず各サブグループの後のベンチマークZが計算され、そのベンチマークZがDPMOに変換されます。ベンチマークZの値は、LTおよびST両方のどちらの場合も、推定平均および推定標準偏差の関数です。
工程が安定している場合は、このプロットのラインは一定の値に近づきます。ラインが安定しない場合は、工程が不安定であるか、または十分なデータがないことを示しています。上の例では、ラインはいずれもプロットの左側では変動する傾向にありますが、プロットの右側では安定しています。プロットの左側でラインが比較的平らな場合、増減は一定です。これは、工程に変化しているものがあり、平均にずれが生じているか工程変動に変化があることを示しています。ほとんどすべての場合で、LTラインはSTラインの上方に位置しています。これは、工程のずれおよびドリフトの影響により、LTベンチマークZがSTベンチマークZよりも小さくなるためです。
このプロットの両ラインは、サブグループがまだ少ない左側では上下に変動しますが、右側では、十分なデータが収集され、かつ工程が安定していれば安定します。ラインが安定しない場合は、累積統計量レポート4のプロットを用いて、原因が不十分なデータにあるのか、または不安定な工程にあるのかを判定してください。
実態データの表には、指定したプロジェクト情報と工程情報が表示されます。
太字の数値は、STのσ(ベンチマークZ)とLTのDPMOです。ほとんどのブラックベルトは、工程性能のレポートにこの2つの値を使用します。
データが収集された時間の工程の安定性を表します。サブグループサイズが1を超える場合は、Xbar管理図を使用して工程平均の安定性を判断し、S管理図を使用して工程標準偏差の安定性を判断します。サブグループのサイズ=1の場合、MinitabではI管理図とMR管理図が表示されます。
規格限界を基準とした工程許容範囲の推定値を表します。工程許容範囲とは、工程中心点から±3標準偏差の範囲です。工程中心点と工程標準偏差はLTとSTで異なるため、2つのプロットがあります。LTでは工程平均が中心点として使用されますが、STでは目標(または両規格限界の間の中点、一方の規格限界のみが与えられている場合は工程平均)が中心点として使用されます。詳細は、「工程レポートの短期統計量の値の中心位置の決定方法」を参照してください。
言い換えると、これらのグラフは、自動車(工程)がガレージ(規格限界)の中に収まるかどうか、さらに言えば、その自動車がまずガレージの方向に向いているかどうかを示します。上の例では、工程の幅は規格よりも広くなっています。しかし工程はLTプロットが示すように中心に位置しており、これは工程中心点(平均)がほぼ目標の位置にあることを意味します。
工程性能のレポートにおいて一般的に使用される統計量が表示されます。長期(LT)および短期(ST)の性能を測定する統計量の比較の詳細は、工程能力測度についてを参照してください。
工程性能を表すには、ベンチマークZ値を使用します。適切な工程条件に基づいて計算されているだけでなく、ベンチマークZ 統計量からはPPM、DPMOなどの欠陥率の推定値を直接計算できるからです。CCpkおよびPpkはベンチマークZ 統計量と同じ工程条件に基づいているため、これらを代わりに使用することもできます。
具体的な計算の詳細は、工程レポートの工程統計量と工程能力値の計算を参照してください。
この表には工程平均(LT平均)、工程標準偏差(LT標準偏差)、およびその他の基本的な統計量が表示されます。
歪度と尖度を使用し、データが正規分布に従っているかを判断できます。ただし、確率プロットの方がより便利です。(レポート6では正規プロットから欠陥率が推定されています。)
最小値、第1四分位数、中央値、第3四分位数、および最大値から、データの広がり(ばらつき)がわかります。この例では、データの25%は39.1540(第1四分位数)以下、50%は40.0381(中央値)以下、75%は40.8249(第3四分位数)以下となっています。
この表には、工程パラメータの統計的推測値、ST平均、および標準偏差が表示されます。
工程平均の95%信頼区間と検定統計量により、工程平均が工程の目標に等しいかどうかがわかります。工程平均と工程目標の間に統計的に有意な差がない場合は、p値は0.05より大きくなり、工程目標は信頼区間の範囲内になります。上の例では、検定のp値は0.9830で、目標(40)は平均の95%信頼区間の範囲内に位置しています。工程平均が工程目標に等しいという帰無仮説を棄却することはできません。
また、LTとSTの両方の標準偏差に対する95%信頼区間と、この2つの数量が等しいかどうかを調べる検定の結果も表示されます。LTおよびSTの工程間標準偏差に統計的に有意な差がない場合は、工程は有意なシフトやドリフトを呈していない、またデータ収集時に特殊原因は存在していなかったとういう結論になります。上の例では、等分散性検定のp値は0.0011です。結果として帰無仮説は棄却し、LT標準偏差とST標準偏差は有意に異なると結論付ける必要があります。
累積統計量から安定した工程(平均や分散がほぼ一定である)の仮定を確認できます。
このプロットには、データの各サブグループの後のLT標準偏差とST標準偏差の両方の推定値が表示されます。工程性能の測定はすべて工程の標準偏差の推定値に基づいているので、この推定値が正しいかどうかを判断する必要があります。これは、工程が安定しているかどうかと(工程固有の変動性が変化しない)、工程の特徴をつかむのに十分なデータがあるかどうかによって決まります。
LT標準偏差とST標準偏差の推定値はサブグループをほとんど含まないプロットの左側にかなり変動します。工程が安定し、かつ十分なデータが収集されていれば、推定値はプロットの右側で安定します。プロットのラインの変動くのは、データが十分に収集されていないか、工程変動が安定していない場合です。
工程が安定している場合は、LT標準偏差とST標準偏差の差がほぼ一定になります。工程が変動している場合、たとえば、平均のシフトや変動の変化が見られる場合は、LT標準偏差とST標準偏差の差が変化します。
詳細は工程レポートで工程平均のシフトを特定すると工程レポートで工程変動性の増加を特定するを参照してください。
このプロットには、データの各サブグループの後の偏差の二乗の和(全体平方和または平方和 LT)と、データの各サブグループの後の各サブグループ内偏差の二乗の総和(グループ内平方和または平方和 ST)の両方が表示されます。詳細は、工程レポートの平方和の計算を参照してください。
平方和 STは、工程固有の変動における変化を検出するためのすぐれた診断ツールとして利用できます。工程固有の変動が安定していれば、各サブグループのグループ内平方和はほぼ同じになるはずです。したがって、サブグループごとの平方和 STの増加量はほぼ同じとなり、その結果、平方和 STのラインは一定の傾きで上昇します。工程固有の変動性に変化がある場合は、平方和 STラインの傾きの変化として現れます。
全体平方和は、グループ内平方和とグループ間平方和の和です。したがって、全体平方和は、工程分散と工程平均の両方が安定性しているかどうかに影響を受けます。両方とも安定していれば、各サブグループで、全体平方和に対する寄与度がほぼ同じになるはずです。したがって、サブグループごとの平方和 LTの増加量はほぼ同じとなり、その結果、平方和 LTのラインは一定の傾きで上昇します。工程固有の変動性に変化がある場合は、平方和 LTラインの傾きの変化として現れます。
工程固有の変動性に突発的な変化がある場合は、グループ内平方和とグループ間平方和の両方が影響を受け、平方和 STラインと平方和 LTラインの両方の傾きが変化します。したがって、両方のラインの傾きが変化する場合は、工程固有の変動性に変化があることを示しています。
工程平均のシフトは、グループ間平方和に影響しますが、グループ内平方和には影響しません。その結果、平方和 LTラインの傾きは変化しますが、平方和 STラインの傾きは変化しません。したがって、平方和 LTラインの傾きが変化し、平方和 STラインの傾きは変化しない場合は、工程平均におけるシフトを示しています。
詳細は工程レポートで工程平均のシフトを特定すると工程レポートで工程変動性の増加を特定するを参照してください。
このプロットでは、各サブグループの後の工程平均の推定値が表示されます。工程平均の推定値の妥当性は収集したデータ量と工程の安定性によって異なります。
推定値は、サブグループをほとんど含まないプロットの左側で、上下にかなり変動します。工程が安定し、かつ十分なデータが収集されていれば、推定値はプロットの右側で安定します。ラインの変動が続くのは、データ収集量が十分でないか、工程平均が著しく変動している場合です。累積標準偏差プロットを参照し、不十分なデータ収集量が原因なのかどうかを判断してください。データ収集が十分でない場合、LTライン、STラインが変動します。
累積基準レポートには、各サブグループの後にZ.Shift統計とベンチマークZ統計(LTおよびST)が表示されます。
Z.Shift は、ベンチマークZ LTとベンチマークZ STの差と等しくなります。
このプロットのラインは、サブグループが少ない左側では上下に変動しますが、データ収集が十分で工程が安定していれば、右側で安定します。
ベンチマークZ プロットは、工程性能レポートの作成に使用する統計として信頼できる十分なデータが収集されているかどうかを示します。このプロットの両方のラインは、サブグループが少ない左側では上下に変動しますが、データが十分に収集され、工程が安定していれば右側で安定します。ラインが安定しない場合は、累積統計量レポートのプロットを用いて、原因が不十分なデータにあるのか、または不安定な工程にあるのかを判定してください。
ベンチマークZ プロットでの差とZ.Shift プロットのラインはいずれも、上の例に示すように定数値に近づいていきます。
これらのプロットを用いて、データが正規分布に従っているかを判断することができます。データが正規分布に従っていない場合は、欠陥率の推定値(DPMOなど)の精度が低下します。ほとんどの場合、推定値は実際の値より低くなります。このため、DPMOなどの推定値を使用する前に、正規プロットと2つのヒストグラムをチェックして、少なくともデータの分布がほぼ正規であることを確認してください。上の例では、データはほぼ正規分布に従っていると言えます。
データの歪みが大きい場合は、Box-Cox変換などを用いて修正します。工程レポート オプションサブダイアログボックスで以下とともにBox-Coxべき変換 (W=Y^λ) を使用を選択した場合、Minitabではデータ、目標値、および規格限界が変換されます。データの変換を手動で行った場合は、目標値と規格限界の変換も手動で行ってください。
サブグループ平均とサブグループ標準偏差間の間に相関がない場合、このプロットには上の例のようにランダムに散在する点が表示されます。
平均と標準偏差の間に正の相関がある場合は、サブグループ平均の増加に従ってサブグループ標準偏差間が増加する傾向が見られます。一般的な分散安定化変換であるBox-Cox変換(λ = 0)は、通常このようなケースに効果があります。
Lag 1 Mean vs Mean(遅れ(Lag)1平均対平均)は、(サブグループの平均)i対(サブグループの平均)i–1のプロットです。このプロットでは、上の例のようにランダムに散在する点が表示され、連続するサブグループ平均間に相関がないことを示しています。
正の相関が存在し、あるサブグループの平均が全工程平均よりも大きい場合は、次のサブグループ平均も全工程平均より大きくなる可能性があります。つまり、正の相関は、工程平均がドリフトしていることを示しています。負の相関は、2連続の低いサブグループ平均ではなく、交互のサブグループ平均(低、高、低)を表します。この負の相関は、工程の管理が過度であることを示しています。
Lag 1 StDev vs StDev(遅れ(Lag)1標準偏差対標準偏差)は、(サブグループの標準偏差)i対(サブグループの標準偏差)i–1のプロットです。このプロットでは、上の例のようにランダムに散在する点が表示され、連続するサブグループ標準偏差間に相関がないことを示します。
サブグループ平均と同じように、正の相関が存在し、あるサブグループの標準偏差が全サブグループの平均標準偏差よりも大きい場合は、次のサブグループの標準偏差も全サブグループの平均標準偏差より大きくなる可能性が高くなります。したがって、サブグループ標準偏差間は上下に変動する傾向にあります。このとき、平均も上下に変動し、さらにサブグループ平均とサブグループ標準偏差間の相関が伴うことがあります。この場合は、λ = 0のBox-Cox変換を使用してみてください。
サブグループ標準偏差間の正の自己相関が存在する場合は、要因として工具の磨耗や工程におけるその他の老朽化(その結果変動が増加し続ける)や、変動に影響を及ぼす制御不能な撹乱因子(相対湿度など)が考えられます。