第1種の過誤および第2種の過誤とは

100%確実な仮説検定はありません。仮説検定は確率に基づいているため、間違った結論を導く可能性が必ずあります。仮説検定を実行する場合、第1種と第2種の2種類の過誤の可能性があります。これらの2つの過誤のリスクには逆相関関係があり、検定の有意水準と検出力によって決まります。したがって、それらのリスクを定義する前に、どちらの過誤がより重大な結果をもたらすかについて検討する必要があります。
第1種の過誤
真である帰無仮説を棄却した場合は、第1種の過誤となります。第1種の過誤を犯す確率はαで表されます。これは、仮説検定のために設定する有意水準です。αが0.05の場合は、帰無仮説を棄却する際に5%は過誤を犯すことを受け入れることを示します。このリスクを低減するには、αにより小さい値を使用する必要があります。ただし、αにより低い値を使用することは、実際に差が存在する場合にそれを検出する可能性が低くなるということを意味します。
第2種の過誤
帰無仮説が偽の場合に、誤って棄却しない判断を下すと、第2種の過誤となります。第2種の過誤を犯す確率はβで表されます。これは、検定の検出力によって決まります。第2種の過誤を犯すリスクは、十分な検出力を確保することによって低くすることができます。これは、実際に差が存在した場合にそれを検出するのに十分な大きさのサンプルサイズにすることで確保できます。

偽である帰無仮説を棄却する確率は、1 - βに等しくなります。この値が検定の検出力です。

  母集団に関する真実
サンプルに基づいた判断 H0が真 H0が偽
H0を棄却しない 正しい判断(確率 = 1 - α) 第2種の過誤 - 偽の場合にH0を棄却することに失敗(確率 = β)
H0を棄却する 第1種の過誤 - 真の場合にH0を棄却(確率 = α) 正しい判断(確率 = 1 - β)

第1種の過誤および第2種の過誤の例

第1種の過誤と第2種の過誤の相互関係を理解し、状況に応じてどちらの誤りがより重大な結果をもたらすかについて判断するには、次の例について考慮します。

医療研究者が、2つの薬剤の効能を比較したいと考えています。この場合、帰無仮説と対立仮説は次のようになります。
  • 帰無仮説(H0): μ1= μ2

    2つの薬剤の効能は等しい。

  • 対立仮説(H1): μ1≠ μ2

    2つの薬剤の効能は等しくない。

第1種の過誤は、研究者が帰無仮説を棄却し、2つの薬剤の効能に実際には差がないにもかかわらず差があると結論付けることです。もし、薬剤の効能が同じであれば、患者はどちらの薬剤を服用しても同じ水準の効果を得ることができるため、この過誤はそれほど重大ではないと考えられます。しかし、第2種の過誤を犯した場合、研究者は棄却すべき帰無仮説を棄却することに失敗します。つまり、実際には異なるのに、2つの薬剤の効能は同じと結論付けてしまいます。この種の誤りには、効能の高い薬剤の代わりに効能の低い薬剤を市販してしまう場合のように、命を脅かす危険性があります。

仮説検定を実行する際には、第1種の過誤と第2種の過誤を犯すリスクについて考慮します。どちらかの種類の過誤を犯すことによる結果がもう一方の種類の過誤より重大またはよりコストが大きくなる場合、それらの結果の重大性に応じて検定の有意水準と検出力を選択します。