Minitabには、時系列を分析するための分析方法がいくつか用意されています。それらの分析方法には、単純な予測と平滑化の方法、相関分析法、ARIMA(自己回帰和分移動平均)モデリングなどがあります。相関分析はARIMAモデリングと別々に行うことが可能ですが、Minitabには、相関方法がARIMAモデリングの一部として組み込まれています。
単純な予測と平滑化の方法では、通常はデータの時系列プロットで容易に観測される系列内の成分をモデル化します。この方法では、データをその成分部に分解してから、それらの成分の推定値を拡張して将来の予測値を求めます。静的方法(トレンド分析および分解)を選択するか、動的方法(移動平均法、1系列指数平滑化と二重指数平滑化、およびWinterの方法)を選択することがができます。静的方法には時間の経過に伴って変化しないパターンがあり、動的方法には、時間の経過に伴って変化するパターンがあって、隣接する値を使用して推定値が更新されます。
これら2つの方法を組み合わせて使用することもできます。つまり、1つの静的方法を選択して1つの成分をモデル化し、1つの動的方法を選択して別の成分をモデル化することができます。たとえば、トレンド分析を使用して静的なトレンドを当てはめ、Winterの方法を使用して残差の季節成分を動的にモデル化することができます。あるいは、分解を使用して静的季節モデルを当てはめ、二重指数平滑化を使用して残差のトレンド成分を動的にモデル化することもできます。また、トレンド分析と分解を同時に適用し、トレンド分析によって得られるさまざまなトレンドモデルを使用できるようにすることができます。いくつかの方法を組み合わせて使用する場合の欠点は、予測の信頼区間が有効ではなくなることです。
それぞれの方法について、共通データの適合値と予測値の要約およびグラフを示した表を以下に示します。
一般的なトレンドモデルを時系列データに当てはめます。線形モデル、2次モデル、指数的増加または減衰モデル、S曲線トレンドモデルの中から選択します。この方法を使用してトレンドを当てはめるのは、系列に季節成分がない場合です。
時系列を、線形トレンド成分、季節成分、および誤差に分離します。季節成分が、トレンドとの関係で加法的か、または乗法的かを選択します。この方法を使用して予測を行うのは、系列に季節成分が含まれる場合か、または各成分の性質を調べる場合です。
系列内の連続する観測値の平均を求めることによってデータを平滑化します。この方法は、データにトレンド成分がない場合に使用できます。季節成分がある場合は、移動平均の長さを季節サイクルの長さと等しい長さに設定します。
最適な1ステップ先のARIMA (0,1,1)予測計算式を使用してデータを平滑化します。この方法は、トレンド成分または季節成分が存在しない場合に最も有効です。移動平均モデルにおける単一の動的成分は水準です。
最適な1ステップ先のARIMA (0,2,2)予測計算式を使用してデータを平滑化します。この方法は、トレンドがあっても、一般的な平滑化法としても使用可能な場合に有効です。二重指数平滑化では、水準とトレンドという2つの成分の動的推定値を計算します。
Holt-Winter指数平滑化によってデータを平滑化します。この方法を使用するのは、トレンドと季節性があり、それら2つの成分が加法的または乗法的である場合です。Winterの方法では、水準、トレンド、季節という3つの成分の動的推定値を計算します。
ARIMA(自己回帰和分移動平均)モデリングでも、データ内のパターンを利用しますが、これらのパターンはデータのプロットで容易に視覚化できない可能性があります。そのため、ARIMAモデリングでは、代わりに階差、自己相関関数、および偏自己相関関数を使用して、許容可能なモデルを特定することができるようにしています。
ARIMAモデリングを使用して、トレンド成分と季節成分があるかどうかに関係なく、多種多様な時系列をモデル化して予測を行うことができます。予測プロファイルは、当てはめるモデルに依存します。単純な予測と平滑化の方法と比較した場合のARIMAモデリングの利点は、データを当てはめる場合の柔軟性が高まることです。ただし、モデルを識別して当てはめる処理には時間がかかる可能性があり、ARIMAモデリングの自動化は容易ではありません。