大規模で完全なデータセットに対しては、LSE法とMLE法のどちらでも一貫した結果が得られます。信頼性に適用する場合、データセットは小規模または中規模であることが一般的です。大規模なシミュレーション研究により、サンプルサイズが小さい計画で故障数がわずかである場合には、MLE法がLSE法よりも優れていることがわかっています。
データが多量に打ち切られたために故障数がわずかである場合、MLE法では打ち切られた値を含むデータセット全体の情報が使用されます。LSE法では、打ち切られた観測値の情報は無視されます。1
通常、MLE法の利点がLSE法の利点よりも重要になります。LSE法は手計算がより簡単で、プログラムするのもより簡単です。また、LSE法は従来より、適合度を評価する確率プロットの使用と関連付けられています。ただし、LSE法は確率プロット上で誤った結果をもたらす可能性があります。たとえば、LSE法を使用してワイブル確率プロット上で点が直線に沿って並んでいても、ワイブルモデルが実際には適切ではない場合などがあります。1
1. Genschel, U. and Meeker, W.Q. (2010). A Comparison of Maximum Likelihood and Median-Rank Regression for Weibull Estimation. Quality Engineering, 22(4): 236–255.
当初は、LSE法を使用した場合の標準誤差、信頼区間、検定の計算された結果を使用できました。これらの計算結果はアドホック法に基づいていました。しかし、LSE法を使用したモデルパラメータの標準誤差を計算することが認められた統計学上の方法は確立されていません。そのため、デフォルトの推定法を変更して、最小二乗(順位(Y)の故障時間(X))を選択する場合、モデルパラメータの標準誤差、信頼区間、検定に計算された結果が出力されません。結果にモデルパラメータの信頼区間と検定を含める場合は、MLE(デフォルト)法を使用する必要があります。
パラメトリック分布分析、分布識別プロット、または分布概要プロットを使用する際にパラメータ推定法をMLEからLSEに変更するには、次の操作を行います。
分析 | ボタン |
---|---|
パラメトリック分布分析 | 推定 |
分布識別プロット | オプション |
分布概要プロット | オプション |
最小二乗推定法を使用する場合、推定値は確率プロットの点に回帰直線を適合することによって計算されます。この直線は、変換されたパーセント値(Y)における故障までの時間または故障までの時間の対数(X)を回帰推定することによって形成されます。
分布の百分位数は推定された分布パラメータに基づくため、推定されたパラメータが異なると推定された百分位数も異なります。
最尤推定法を使用してパラメータを推定する場合、アルゴリズムの開始値および最大反復数を指定できます。
分布 | パラメータ |
---|---|
ワイブル | 形状と尺度を入力 |
指数 | 平均を入力 |
その他の2パラメータ分布 | 位置と尺度を入力 |
2パラメータ指数 | 尺度としきい値を入力 |
3パラメータワイブル | 形状、尺度、しきい値を入力 |
その他の3パラメータ分布 | 位置、尺度、しきい値を入力 |
Minitabでは、工程を反復することで最尤推定値が計算されます。収束する前に最大反復回数に達した場合は、アルゴリズムが終了します。
パラメトリック分布分析(右打ち切り)およびパラメトリック分布分析(任意打ち切り)でいずれかの推定法を使用できます。しかし、Minitabでいずれかの方法を使用して推定せずに、一部またはすべてのパラメータを指定することもできます。パラメータを指定する場合、百分位数などの計算された結果は、分析に入力したパラメータの値に基づきます。
分布のパラメータの一部を指定し、残りをMinitabでデータから推定することができます。通常、データに故障が皆無またはそれに近い場合にベイズ分析を実行するために一部のパラメータを推定します。詳細は、「故障が皆無またはそれに近い場合に信頼性分析を実施する方法」を参照してください。
分布 | 指定できるパラメータ |
---|---|
ワイブル | 形状 |
3パラメータワイブル | 形状、しきい値、または両方 |
指数 | なし |
2パラメータ指数 | Threshold |
しきい値なしのその他の分布 | および尺度 |
しきい値付きのその他の分布 | 尺度、しきい値、または両方 |
ワイブル分布の尺度パラメータは常に推定します。位置パラメータを持つ分布に対しては、位置パラメータは常に推定します。
すべてのパラメータを、データから推定せずに指定できます。パラメータの経験値を指定することにより、パラメータの経験値に基づく推定値と現在のデータに基づく推定値を比較したり、パラメータの経験値に基づいて現在のデータが確率プロットにどの程度適合するかを調べることができます。
分布 | パラメータ |
---|---|
ワイブル | 形状と尺度を入力 |
指数 | 平均を入力 |
その他の2パラメータ分布 | 位置と尺度を入力 |
2パラメータ指数 | 尺度としきい値を入力 |
3パラメータワイブル | 形状、尺度、しきい値を入力 |
その他の3パラメータ分布 | 位置、尺度、しきい値を入力 |
パラメトリック分布分析を実行するとき、推定値の共通の形状パラメータまたは尺度パラメータを前提にできます。
推定値を計算するときに共通の形状パラメータまたは尺度パラメータが前提になります。たとえば、平均は異なるが分散が同じの、個々に正規分布に従うサンプルが2つあると仮定します。サンプルごとの平均を推定するには、分散の併合推定値を使用します。この手法は、他の分布にも一般化されます。ただし、特定の結果は、分析で選択した推定法によって変わります。
最尤法では、対数尤度関数を使用します。この場合、モデルの対数尤度関数は個々の対数尤度関数の合計であり、対数尤度関数ごとに同じ形状パラメータが前提となります。その結果得られる全体の対数尤度関数は、グループごとに関連付けられる尺度パラメータおよび共通の形状パラメーターを取得できるように最大化されます。詳細は、次の参考文献を参照してください。Nelson (1982). Applied Life Data Analysis, Chapter 12. John Wiley & Sons.
Minitabでは、まずグループごとのY座標とX座標が計算されます(詳細はパラメトリック分布分析(右打ち切り)における確率プロットの方法と計算式の「プロット点」と「適合線」を参照してください)。次に、LSE推定値を得るために、次のステップを実行します。
対数-位置-尺度分布(ワイブルなど)では、X座標は対数変換する必要があります。グループの傾きは同じである必要があります。傾きは共通の形状パラメータの逆数です。