タグチの計画は、動作環境の中で一貫して機能するような製品や工程を選べるように計画された実験です。タグチ計画では、変動を生じさせるすべての因子を制御することは不可能であることを認識しています。これらの制御できない因子は、雑音因子と呼ばれます。タグチ計画では、雑音因子の影響を最小限に抑える制御可能な因子(制御因子)の特定を試みます。実験中、雑音因子を操作して変動性を強制的に生じさせ、工程または製品をロバストにする、つまり雑音因子による変動の影響を受けにくくする最適制御因子を見つけます。この目的のため計画された工程では、より一貫した出力が得られます。また、このような目標に合わせて設計された製品は、製品を使用する環境が変化しても性能が安定しています。
タグチ計画の有名な例は、1950年代に日本の伊奈製陶が実施したものです。当時の伊奈製陶では、製造したタイルが規定寸法外になることがあまりにも多くありました。品質チームは、タイルの焼窯内部の温度が変動する結果、タイルの寸法が不均一になることを突き止めました。窯を新設するには費用がかかりすぎるため、温度の変動を解消することはできませんでした。そのため、温度は雑音因子でした。チームは、タグチ計画の実験を実施して、制御因子である粘土の石灰成分を増やすことにより、窯の温度変動に対するタイルの耐性が増す、つまりロバストになることを発見し、こうしてより均一なタイルを製造できるようになりました。
タグチ計画では、直交表を使用して応答平均と変動に与える因子の影響を推定します。直交表は、計画で因子水準が均等に重み付けられていることを表します。したがって、他のすべての因子から独立して各因子を評価することができ、1つの因子の効果が他の因子の推定に影響することがありません。このため、細分化された計画を使用する実験にかかる時間と費用を削減することが可能です。
直交表計画は、主効果に焦点を置いた手法です。Minitabのカタログに用意されている直交表の一部で、限定された交互作用を分析できます。
タグチ計画に信号因子を追加して、動的応答実験を作成することもできます。動的応答実験は、信号と出力応答の関数関係を改善するために使います。
これらの結果とプロットを使ってどの因子と交互作用が重要かを判断し、それらがどのように応答に影響しているかを評価します。通常、因子の効果を完全に理解するためには、SN比、平均(静的計画)、傾き(タグチ動的計画)および標準偏差を評価する必要があります。データのタイプと、応答の最適化という目標に合ったSN比を選択するようにします。
モデルに曲面性が存在すると思われるときは、3水準計画など、応答曲面における曲面性を検出できる計画を選択します。
Minitabには2種類のタグチ計画が用意されていて、これらを使用して実施環境でより一貫して機能する製品または工程を選択できます。どちらの計画でも、製品またはサービスに対する雑音因子の効果を最小化する制御因子を特定します。
動的応答計画では、品質特性が特定範囲の値にわたって変化します。到達点は、信号因子と出力応答の関係を改善することです。
たとえば、減速量はブレーキの性能の測度です。信号因子は、ブレーキのペダルを踏み込む量のことです。ドライバーがブレーキペダルを踏み込むと、減速量が増します。ペダルの踏み込み量は、減速量に有意な効果を持ちます。ペダルの踏み込み量の最適設定は存在しないので、これを管理因子として試験するのは妥当ではありません。その代わりに、ブレーキペダルの踏み込み範囲にわたって最も効果的で最も変動の少ない減速量を実現するブレーキシステムを計画する必要があります。
次の表は、L8(27)タグチ計画(直交表)です。L8は、実行数が8であることを表します。27は、7つの各因子にそれぞれ水準が2つあることを意味しています。これが完全実施要因計画であれば、27 = 128が実行数になります。L8(27)直交表では、その一部である8つの実行しか必要ありません。この表は直交しており、計画全体で因子水準が均等に重み付けられています。表の列は制御因子を、行は実行(因子水準の組み合わせ)を、各セルはその実行での因子水準を表しています。
A | B | C | D | E | F | G | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
2 | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 |
3 | 1 | 2 | 2 | 1 | 1 | 2 | 2 |
4 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 | 1 | 1 |
5 | 2 | 1 | 2 | 1 | 2 | 1 | 2 |
6 | 2 | 1 | 2 | 2 | 1 | 2 | 1 |
7 | 2 | 2 | 1 | 1 | 2 | 2 | 1 |
8 | 2 | 2 | 1 | 2 | 1 | 1 | 2 |
この例では、直交表内の各因子で水準1と2が4回ずつ起こっています。因子Aの水準と因子Bの水準を比較したとき、B1とB2は、A1との関係でそれぞれ2回ずつ、A2との関係でもそれぞれ2回ずつ起こっています。因子の各ペアがこのようにバランス型になっているため、因子を他から切り離して個別に評価することができます。
L8(3因子または4因子)、L16(3~8因子)、L32(3~16因子)の直交表に基づく2水準計画については、Minitabでは可能であれば完全実施要因計画が選択されます。完全実施要因計画が可能でない場合には、分解能IVの計画が選択されます。
その他の計画の場合、Minitabでのデフォルトの計画は田口および小西による計画のカタログに基づきます。
Minitabでは、さまざまな直交計画で使用されるデフォルト列の決定に明快な方法が使用されています。因子数kのタグチ計画を作成する場合、 直交表の最初のk列が使用されます。