アスタリスクは、モデルが飽和し、誤差に対する自由度が十分でないために計算できない欠損値を表します。
たとえば、飽和している完全実施要因DOEモデルについて考えます。3因子2水準の計画で、因子はA、B、C、反復なし、中心点なし、ブロックなしとします。この計画の実験実行数は8です。
計画を分析するときに、すべての主効果(A、B、C)および交互作用項(AB、AC、BC、ABC)を含めることにより飽和モデルを適合します。結果の分散分析表では、残差誤差のSS値、残差誤差のMS値、すべてのF統計量、およびすべてのp値はアスタリスクで表示されます。
一般因子回帰: C8対C5, C6, C7
分散分析
要因 自由度 調整平方和 調整平均平方 F値 p値
モデル 7 71.988 10.284 * *
線形 3 44.732 14.911 * *
C5 1 16.647 16.647 * *
C6 1 4.200 4.200 * *
C7 1 23.885 23.885 * *
2元交互作用 3 13.074 4.358 * *
C5*C6 1 7.982 7.982 * *
C5*C7 1 1.304 1.304 * *
C6*C7 1 3.789 3.789 * *
3元交互作用 1 14.182 14.182 * *
C5*C6*C7 1 14.182 14.182 * *
誤差 0 * *
合計 7 71.988
表内の欠損値は計算することが不可能な統計量です。これらは、次の計算で示すように、残差誤差に対する自由度(DF)が0であるために計算が不可能になっています。
- 合計DF = 実行数 - 1
- 主効果のDF = 因子の水準数 - 1
- 交互作用効果のDF = 成分因子のDFの積
- 残差誤差のDF = 合計DF - モデルに含まれるすべての項のDFの合計
前の例を使用して計算すると次のようになります。
- 合計DF = 8 - 1 = 7 (8行のデータ)
- 因子AのDF = 2 - 1 = 1(因子Aの水準は2つ)
- 因子BのDF = 2 - 1 = 1
- 因子CのDF = 2 - 1 = 1
- 交互作用ABのDF = (1)*(1) = 1(因子AのDFが1、因子BのDFも1)
- 交互作用ACのDF = (1)*(1) = 1
- 交互作用BCのDF = (1)*(1) = 1
- 交互作用ABCのDF = (1)*(1)*(1) = 1
- 残差誤差のDF = 7 - (1 + 1 + 1 + 1 + 1 + 1 + 1) = 0
誤差に対する自由度が0の場合、次のように計算が失敗します。[調整平均平方]列の各値は[調整平方和]列の値を対応する[自由度]の値で割って計算されます(因子Aの調整平均平方 = 調整平方和 / 自由度 = 0.0621 / 1 = 0.0621)。しかし、自由度0で割ることは不可能であるため、残差誤差の調整平均平方(誤差の平均平方、MSEとも呼ばれる)は計算できません。
さらに、表の[F]列の各値は各調整平均平方をMSEで割ることによって計算されます。たとえば、因子AのF値は0.0621 / MSEになります。しかし、MSEが計算できないため、F値も計算できないことになります。
最後に、p値はF統計量から計算されます。したがって、F値が欠損するとp値も欠損します。
2水準計画で1つの反復があり、モデルにすべての項を含める場合、分散分析表でp値とF統計量が欠損します。この状況を解決するには、1つ以上の交互作用項を削除してモデルを再適合します。飽和モデルから削除する最も高次の交互作用を決定するには、効果プロットを使用して交互作用の統計的有意性を推定します。
たとえば、を選択し、モデルボタンをクリックして、モデルからABC交互作用項を削除すると、分散分析表の主効果と二元交互作用のすべての値が計算可能になります。
一般因子回帰: C8対C5, C6, C7
分散分析
要因 自由度 調整平方和 調整平均平方 F値 p値
モデル 6 71.2775 11.8796 16.72 0.185
線形 3 39.1531 13.0510 18.37 0.169
C5 1 34.4645 34.4645 48.51 0.091
C6 1 2.4839 2.4839 3.50 0.313
C7 1 2.2047 2.2047 3.10 0.329
2元交互作用 3 32.1244 10.7081 15.07 0.187
C5*C6 1 7.0882 7.0882 9.98 0.195
C5*C7 1 2.3336 2.3336 3.28 0.321
C6*C7 1 22.7027 22.7027 31.95 0.111
誤差 1 0.7105 0.7105
合計 7 71.9880
誤差に対する自由度1が残っているため、誤差の平均平方、F、p値が計算できるようになり、すべての値が計算されます。