要因計画の分析の主要な結果を解釈する

要因計画を分析するには、次の手順を実行します。主要な出力は、パレート図、p値、係数、モデル要約統計量、残差プロットです。

ステップ1:応答の変動性に最も寄与する項を特定する

標準化効果のパレート図を使用すると、主効果および交互作用両方の相対的重要度および統計的有意性を比較することができます。パレート図には、効果のタイプが以下の通りに表示されます。
  • モデルに誤差項が含まれていない場合、図には非標準化効果の絶対値が表示されます。
  • モデルに誤差項が含まれている場合、図には標準化効果の絶対値が表示されます。

Minitabでは、標準化効果をその絶対値の降順でプロットします。管理図上の参照ラインは、効果の有意性を示します。デフォルトでは、有意水準0.05で参照ラインが引かれます。誤差項がない場合、レンス法を使用して参照線を描きます。

主要な結果:パレート図

この結果では、4つの主効果は統計的に有意です(α = 0.05)。この有意な効果には、主効果が4個すべて含まれています。すなわち、材料タイプ(A)、射出圧力(B)、射出温度(C)、および冷却温度(D)です。

また、射出圧力(B)は最も長く伸びているため、これが最大の効果を持つこともわかります。射出圧力と冷却温度の交互作用(BD)の効果は、最も短いので最小です。

ステップ2:応答に対して統計的に有意な効果を持つ項を特定する

モデルにおける応答と各項の間の関係が統計的に有意かどうか判断するには、項のp値と有意水準を比較して帰無仮説を評価します。この帰無仮説は、項の係数は0に等しく、項と応答に関連性がないという仮定です。通常は、有意水準(αまたはアルファとも呼ばれる)として0.05が適切です。0.05の有意水準は、実際には関連性がない場合でも、関連性が存在すると結論付けてしまうリスクが5%であるということを示します。
p値 ≤ α:関連性は統計的に有意です
p値が有意水準以下の場合は、応答変数と項の間に統計的に有意な関連性が存在すると結論付けることができます。
p値 > α:その関連性は統計的に有意ではありません
p値が有意水準より大きい場合は、応答変数と項の間に統計的に有意な関連性があると結論付けることはできません。項を持たないモデルを再適合したいと考えるかもしれません。
応答との間に統計的に有意な関連性がない予測変数が複数存在する場合は、一度に1つずつ項を削除することによってモデルを縮約できます。モデルからの項の削除の詳細は、モデルの縮約化を参照してください。
モデル項が統計的に有意な場合、解釈は項のタイプによって異なります。解釈は以下のとおりです。
  • 因子の係数が有意な場合は、すべての水準平均が等しいとは限らないと結論付けることができます。
  • 共変量の係数が有意な場合は、その変数の値の変化は平均応答値の変化と関連します。
  • 交互作用項の係数が有意な場合は、因子と応答の間の関係はその項の他の因子に依存します。こうしたケースでは、交互作用の影響を考慮せずに主要な影響を解釈すべきではありません。

分散分析

要因自由度調整平方和調整平均平方F値p値
モデル11451.35741.03217.990.007
  共変量13.5913.5911.580.278
    測定温度13.5913.5911.580.278
  線形4304.58776.14733.390.002
    材料135.05335.05315.370.017
    射出圧力1113.068113.06849.590.002
    射出温度175.53375.53333.120.005
    冷却温度138.66638.66616.960.015
  2元交互作用620.3093.3851.480.366
    材料*射出圧力11.7321.7320.760.433
    材料*射出温度13.0453.0451.340.312
    材料*冷却温度10.0950.0950.040.848
    射出圧力*射出温度11.5381.5380.670.458
    射出圧力*冷却温度10.0120.0120.010.947
    射出温度*冷却温度114.69414.6946.440.064
誤差49.1212.280   
合計15460.478     
主要な結果:p値、係数

この結果では、材料、射出圧力、射出温度、冷却温度の主効果は有意水準0.05において統計的に有意です。この結果から、これらの変数の変化は応答変数の変化に関連付けられていると結論付けることができます。

このモデルにおいては測定温度が共変量となります。主効果の係数は、共変量の1単位分の増加に対する平均応答の変化を表し、モデル内の他の全ての項は固定されます。温度が1単位増加する毎に、平均強度の推定値は-1.229下がります。

二元交互作用項は統計的に有意ではありません。各変数と応答の関係は、他の変数の値に依存しない可能性があります。

ステップ3:データに対するモデルの適合度を判断する

データに対するモデルの適合度を判断するために、モデル要約表の適合度統計量を調査します。

S

Sを使い、モデルがどの程度良好に応答を表示するか判断します。R2統計量のかわりにSを使い、定数を持たないモデルの適合を比較します。

Sは応答変数の単位で測定され、データ値と適合値の間の距離を表します。Sの値が小さければ小さいほど、モデルによる応答の記述が良好になります。ただし、Sの値が小さいだけでは、そのモデルが仮定を満たしているとは言い切れません。残差プロットを確認して仮定を検証する必要があります。

R二乗

R2値が大きくなるほど、モデルのデータへの適合度は上がります。R2は常に0~100%の間の値になります。

R2はモデルに新しい予測変数を追加すると必ず大きくなります。たとえば、最適な5予測変数モデルのR2は必ず、最適な4予測変数モデルと少なくとも同じ大きさになります。したがって、R2値は同じ大きさのモデルの比較に最も便利です。

R二乗(調整済み)

異なる数の予測変数を持つモデルを比較する場合は、調整済みR2を使用します。R2はモデルに予測変数を追加すると、それがモデルを改善しないとしても必ず大きくなります。調整済みR2値にはモデルに含まれる予測変数の数が組み入れられるため、正しいモデルの選択に役立ちます。

R二乗(予測)

予測R2を使用して、モデルが新しい観測値に対する応答をどの程度良好に予測するかを判断します。予測R2値が大きいモデルの予測能力は優れています。

R2よりも大幅に低い予測R2は、モデルの過剰適合を示している可能性があります。過剰適合は、母集団には重要でない項を追加した場合に起こります。そのモデルはサンプルデータに即してしまい、母集団の予測に適さなくなる可能性があります。

予測R2は、モデル計算に含まれていない観測値によって計算されるため、モデルを比較する場合は調整済みR2より便利です。

AICcとBIC
ステップワイズ法の各ステップの詳細を表示するとき、または分析結果を拡大表示するとき、さらに2つの統計量が表示されます。これらの統計量は補正赤池情報量基準(AICc)およびベイズ情報量規準(BIC)です。異なるモデルを比較する際はこれらの統計量を使用します。どちらの統計量でも、小さい値が好ましいと考えられます。分割実験計画にはこれらの統計量は表示されません。
適合度統計量を解釈するとき、以下の点を考慮してください。
  • サンプルサイズが小さい場合、応答と予測との間の関係の強さが正確に推定されません。より正確なR2が必要な場合、サンプルサイズを大きくする必要があります(40以上が一般的です)。
  • R2は、データに対するモデルの適合度を測る1つの測度に過ぎません。モデルのR2が大きくても残差プロットを確認してモデルが仮定を満たしているか検証する必要があります。

モデル要約

SR二乗R二乗 (調整済み)R二乗 (予測)
1.5100598.02%92.57%70.86%
主要な結果:S、R二乗、R二乗(調整済み)、R二乗(予測)

この結果でモデルは、98.02%の光出力の変動を説明しています。これらのデータで、R2値はモデルが良好にデータに適合していることを示しています。新しいモデルが別の予測変数と適合する場合は、調整済みR2値と予測R2値を使ってモデルの適合度を比較してください。

ステップ4:モデルが分析の仮説を満たすかどうか判断する

残差プロットを使用して、モデルが適切か、分析の仮定が満たされているかどうかを判断しやすくします。仮定を満たさない場合、そのモデルはデータにあまり適合しない可能性があり、結果の解釈は慎重に行う必要があります。

残差プロットのパターンを処理する方法の詳細は要因計画の分析の残差プロットを参照し、ページ上部にある一覧の中から残差プロット名をクリックしてください。

残差対適合値プロット

以下の表にあるパターンは、このモデルが、モデルの仮説を満たさないことを示している可能性があります。
パターン パターンが示す意味
残差が適合値周辺に扇状または不均等に分散している 不均一分散
曲線 高次の項の欠損
ゼロから遠い点 外れ値
ある点が他の点からX軸方向に遠く離れている 影響力のある点

残差対適合値プロットを使用して、残差はランダムに分布し、均一な分散が存在するという仮定を検証します。点が特徴的なパターンは無く、0の両側にランダムに来るのが理想的です。

残差対順序プロット

残差対データ順序プロットを使用して、残差が互いから独立しているという仮定を検証します。独立している残差は、時間順で表示した場合にトレンドやパターンを示しません。点にパターンがある場合、互いに近い残差は相関している可能性があり、独立していないことを示しています。プロットの残差が中心線の周りにランダムに来るのが理想的です。
パターンがある場合は原因を調査します。パターンが次のタイプである場合、残差が従属している可能性を示しています。
トレンド
シフト
周期

残差の正規確率プロット

残差の正規確率プロットを使用して、残差が正規分布に従うという仮定を検証します。残差の正規確率プロットは、ほぼ直線になります。

以下の表にあるパターンは、このモデルが、モデルの仮説を満たさないことを示している可能性があります。

パターン パターンが示す意味
直線ではない 非正規性
直線から離れた点 外れ値
傾きが変化する 未確認の変数