拡張ゲージR&R分析の主要な結果の解釈

拡張ゲージR&R分析を解釈するには、次の手順を実行します。主要な出力には、変動の推定値、および測定値と測定変動のグラフなどがあります。

ステップ1: 分散分析表を使用して、有意な因子と交互作用を特定する

分散分析表を使用して、どの変動性の要因が有意であるかを特定します。分散分析表の「要因」列には次の項が含まれます。
  • 部品: 部品による変動。
  • 測定者: 測定者による変動。
  • 枝分かれ因子: 枝分かれ因子による変動。1つの因子の各水準が他の因子の1つの水準のみとともに発生する場合、2つの因子は枝分かれしています。たとえば、2つの測定者が似ているものの異なる2つの部品を測定する場合、部品は測定者で枝分かれするので、部品(測定者)という形で示されます。この場合、各測定者によって測定された部品間の平均測定値が著しく変動すれば、部品(測定者)は有意な変動要因です。
  • 部品*測定者などの交互作用項: 交互作用による変動。たとえば、ある測定者が異なる部品に対して異なる測定を行った場合には、交互作用が存在します。
  • 誤差または繰り返し性: 部品、測定者、またはその他のモデル内の項によって説明できない変動。

交互作用のp値が0.05以上の場合は有意ではないため、Minitabではその交互作用が除外され、有意ではない交互作用を含まない2番目の分散分析表が生成されます。

分散分析表 (すべての項)

要因自由度逐次平方和調整平方和調整平均平方F値p値
部品211071.301071.3051.0146.460.000 
測定者232.1832.1816.0893.270.164x
測定場所111.2511.2511.2473.500.202 
部品*測定者42331.81331.817.9001.270.189 
測定者*測定場所26.436.433.2170.520.598 
繰り返し性63390.53390.536.199     
合計1311843.50         
xは厳密なF検定ではありません。
交互作用項を取り除くためのα= 0.05

分散分析 (ANOVA) 表 (ゲージR&R計算に使用した項付き)

要因自由度逐次平方和調整平方和調整平均平方F値p値
部品211071.301071.3051.0147.490.000
測定者232.1832.1816.0892.360.099
測定場所111.2511.2511.2471.650.202
繰り返し性107728.77728.776.811   
合計1311843.50       
主要な結果: P

この例では、交互作用のp値は0.05より大きくなっています。測定者*部品交互作用のp値は0.189で、測定者*測定場所交互作用のp値は0.598です。そのため、最終モデルから交互作用を除外した2番目の二元配置分散分析表が生成されます。

2番目の分散分析表には、最終ゲージR&Rの計算に使用される項が含まれています。部品(0.000)は、α = 0.05の有意水準において、有意な測定変動要因です。しかし、測定者(0.099)、測定場所(0.202)は、測定変動の有意な要因であるとはいえません。

ステップ2: 測定誤差の各要因による変動を評価する

分散成分および寄与度を使用して、測定誤差の各要因による変動を評価します。要因には次のものがあります。
  • 合計ゲージR&R: 繰り返し性および再現性の分散成分の和。
  • 繰り返し性: 同じ測定者が同じ部品を複数回測定した場合に生じる測定値の変動。
  • 再現性: モデル内のその他の因子によって定義されるさまざまな条件の下で、異なる測定者が同じ部品を測定した場合に生じる測定値の変動。再現性の項は、さらに測定者、測定者*部品、およびその他の主効果と交互作用効果に分けることができます。
  • 部品間: 異なる部品によって生じる測定値の変動。部品だけでなく、他の因子も部品間変動の計算に使用される場合があります。

繰り返し性と再現性に起因するばらつきはほとんどないことが理想的です。部品(部品間)の差は、ばらつきの大部分を占める必要があります。

分散成分

要因分散成分(分散成分の)寄与度
合計ゲージR&R7.107049.10
  繰り返し性6.810947.06
  再現性0.29612.05
    測定者0.21091.46
    測定場所0.08520.59
部品間7.367250.90
    部品7.367250.90
全変動14.4743100.00
主要な結果: 分散成分、寄与度

合計ゲージR&Rの寄与度は49.10%で、これは部品間変動の50.90%とほぼ同じです。繰り返し性変動の寄与度は、部品間の値とほぼ同じ高さになっています。合計ゲージR&R変動の寄与度が部品間変動よりも大幅に低い場合は、測定システムは確実に部品を区別できます。

ゲージ評価

要因標準偏差 (SD)基準変動 (6×SD)%基準変動(%SV)
合計ゲージR&R2.6659015.995470.07
  繰り返し性2.6097815.658768.60
  再現性0.544133.264814.30
    測定者0.459212.755212.07
    測定場所0.291891.75147.67
部品間2.7142716.285671.34
    部品2.7142716.285671.34
全変動3.8045022.8270100.00
主要な結果: %基準変動

パーセント基準変動(%基準変動)を使用して、測定システムの変動と全変動を比較します。%基準変動では、工程標準偏差の6倍として定義される工程変動を使用します。Minitabでは、許容値を入力すると%公差の列が表示され、過去の標準偏差を入力したときに%工程変動の列が表示されます。

AIAGのガイドラインによれば、測定システムの変動が工程変動の10%未満であれば、測定システムを許容できます。合計ゲージR&Rは%基準変動の約70%です。繰り返し性は基準変動の68.60%で、これは測定システムが同じ部品を一貫して測定していないことを示しています。測定システムを改善する必要がある可能性があります。詳細は、測定システムは許容範囲内かを参照してください。

主要な結果: 変動成分グラフ

分散成分グラフには、測定値エラーのソースから分散が表示されます。許容値を入力すると%公差のバーが表示され、過去の標準偏差を入力すると%工程変動のバーが表示されます。

このグラフは、部品間変動が繰り返し性と再現性による変動とほぼ同じであることを示しています。合計ゲージR&R変動は30%よりも大幅に高く、許容できません。

ステップ3: グラフを調べて、より多くのゲージ分析の情報を得る

ゲージR&Rグラフから、測定システムに関する情報が得られます。
分散成分のグラフ
最大の分散成分が部品間変動かどうかを示します。
合格測定システムでは、最大の分散成分が部品間変動です。
測定者別のR管理図
上側臨界距離の上にデータ点が分布するかどうかを示します。
測定者が一貫性のある測定を行っている場合、データ点は臨界距離内に分布します。
測定者別のXbar管理図
大部分のデータ点が臨界距離の下に分布しているかどうかを示します。
ゲージR&R分析で選択する部品は、通常の部品間変動を表現する必要があります。このため、部品の平均間の変動が大きくなると予想する必要があり、グラフは、ほとんどの点が臨界距離の下に分布することを示す必要があります。
1つの因子別の測定値
すべての測定値が1つの因子別に表示されます。このグラフにより、因子水準間の差を視覚化することができます。
部品別または測定者別に測定値を表示するのに加え、拡張ゲージR&R分析では、その他の因子別に整理した測定値のグラフも表示することができます。
部品グラフによる測定
部品ごとの複数の測定値が近似するかどうかを示します。
部品ごとの複数の測定値が近似する場合、同じ部品の測定値間の変動が小さいことを示します。
測定者グラフによる測定
部品間の差と比較して測定者間の差が小さいかどうかを示します。
全測定者にわたるまっすぐな水平線は、測定者ごとの平均測定値が似ていることを示しています。測定値が等しい量で測定者ごとに変化することが理想的です。
交互作用プロット
二つの因子間の交互作用を示します。交互作用は、ある因子の効果が第2因子に依存する場合に発生します。このプロットは、分散分析表の交互作用項のF検定をグラフ表示したものです。
測定者*部品の交互作用を表示するのに加え、拡張ゲージR&R分析では、その他の交互作用のグラフも表示することができます。
測定者*部品の交互作用グラフ
測定者ごとの測定値に接続している線が類似しているかどうか、または線が互いに交差するかどうかを示しています。
線が一致する場合、測定者の測定が類似していることを示しています。並行ではないまたは交差する線は、一貫して部品を測定する測定者の能力は測定されている部品によって変わることを示しています。線が他の線よりも一貫して高いまたは低い場合、測定者は、一貫して高くまたは低く測定することによって偏りを測定値に追加することを示しています。