拡張ゲージR&R分析のすべての統計量およびグラフ

拡張ゲージR&R分析で使用されるすべての統計量およびグラフの定義と解釈について解説します。

自由度

SS(平方和)ごとの自由度(DF)。一般に、自由度では、各SSを計算するために使用できる情報の量を測定します。

逐次平方和

モデル内の各項(因子または交互作用)の逐次平方和は、各項を要因に記載されている順序でモデルに追加することで説明される、応答の変動量の測度となります。このため、項の逐次平方和は、モデルで指定された項の順序に固有のものです。

SS合計 = SS部品 + SS測定者 + SSその他の要因 + SS測定者*部品 + SSその他の交互作用 + SS繰り返し性

調整平方和

調整平方和は、モデル内の異なる成分の変動の測度です。モデル内の項の次数(因子または交互作用)は、調整平方和の計算に影響を及ぼしません。分散分析表では、調整平方和は、異なる要因による変動を説明する成分に分けられます。

調整平均平方

調整平均平方は、項やモデルによってどれだけの変動を説明できるかを測定するものです。このとき、その他のすべての項は、入力された順序にかかわらずモデル内に含まれると仮定します。調整平方和と異なり、調整平均平方では、自由度が考慮されます。

変動の各要因に対して、調整平均平方 = 調整平方和/自由度

Minitabでは、調整平均平方を使用して項のp値を計算します。

F

測定者や部品などの因子の効果、および測定者*部品などの交互作用の効果が統計的に有意かどうかの判定に使用される統計量。

F統計量が大きくなるほど、因子は応答変数または測定変量の変動により有意に寄与します。

P

p値は、サンプルから計算される値と少なくとも同程度に極端な検定統計量(F統計量など)を得る確率です。

解釈

分散分析表にp値を使用して、平均測定値が著しく異なるかどうかを判断します。Minitabでは、分析法の分散分析オプションを選択した場合のみ分散分析表が表示されます。

p値が低い場合、すべての部品、測定者、または交互作用の平均が同じであるという仮定が真でない可能性が高いことを示しています。

平均測定値が著しく異なるかどうかを判断するには、p値を有意水準(αまたはアルファと呼ばれる)と比較して、帰無仮説を評価します。帰無仮説は、グループ平均がすべて等しいと仮定しています。通常、0.05の有意水準が適切です。0.05の有意水準は、差が実際にはないときでも差が存在すると結論付ける可能性が5%あることを示しています。
p値 ≤ α:少なくとも1つの平均に有意な差がある
p値が有意水準以下の場合、帰無仮説を棄却し、少なくとも1つの平均値がその他の平均値と著しく異なっていることを結論付けます。たとえば、少なくとも1人の測定者は異なる測定をします。
p値 > α:平均には有意な差がない
p値が有意水準より大きい場合、母平均が異なると結論付ける十分な根拠はないので、帰無仮説の棄却は失敗します。たとえば、測定者が異なる測定をするとは結論付けられません。
ただし、平均が同じだと結論付けることもできません。差は存在するかもしれませんが、検定にその差を検出する能力がない可能性があります。

分散成分

分散成分とは、分散分析表の各要因の推定された分散成分です。

解釈

分散成分を使用して、測定誤差の各要因による変動を評価します。

合格測定システムでは、最も大きい分散成分は部品間変動です。繰り返し性と再現性が大きな変動量に寄与している場合、問題のソースを調査して修正する必要があります。

寄与度(分散成分)

%寄与度は各分散成分と分散全体の割合です。%寄与度は、全変動によって分割されたソースごとの分散成分として計算され、100を掛けて百分率として表現します。

解釈

測定誤差の各要因による変動を評価するには、寄与度を使用します。

合格測定システムでは、最も大きい分散成分は部品間変動です。繰り返し性と再現性が大きな変動量に寄与している場合、問題のソースを調査して修正する必要があります。

標準偏差(SD)

標準偏差(SD)は、変動のソースごとの標準偏差です。標準偏差は、そのソースの分散成分の平方根と等しくなります。

標準偏差は、部品測定値および公差と同じ単位を使用するため、変動の測定値として便利です。

基準変動(6 * SD)

基準変動は、6または基準変動で指定した乗数を掛けた変動のソースごとの標準偏差として計算します。

通常、工程変動は6sとして定義されます。ここでsは、母集団の標準偏差(σまたはシグマと表されます)の推定値としての標準偏差です。データが正規分布の場合、約99.73%のデータが平均から標準偏差の6倍以内の範囲にあります。異なる割合のデータを定義するには、標準偏差に別の乗数を使用します。たとえば、99%のデータの範囲を知るには、乗数にデフォルトの6ではなく5.15を使用します。

%基準変動(%SV)

%基準変動は、全変動で割って100を掛けた変動のソースごとの基準変動として計算します。

%基準変動は、そのソースの計算された分散成分(VarComp)の平方根です。このため、分散成分の%寄与度の値を合計すると100になりますが、%基準変動は100になりません。

解釈

測定システムの変動を全変動と比較する際には、%基準変動を使用します。部品間変動の低減など、工程改善を評価するために測定システムを使用する場合は、%基準変動によって測定の正確性をより的確に推定できます。部品を規格と比較して評価するために測定システムの工程能力を評価する場合は、%公差が適切な基準です。

%公差(SV/Toler)

%公差は、各要因の基準変動を工程変動で割り、100を掛けて計算されます。

公差を入力することで、Minitabは%公差を計算し、測定システムの変動を規格と比較します。

解釈

%公差を使用して、部品を規格と比較して評価します。部品間変動の低減など、工程改善のために測定システムを使用する場合は、%基準変動が適切な基準です。

%工程変動(SV/Proc)

工程変動を推定するために過去の標準偏差を入力したものの分析内の部品を使用する場合、Minitabでは%工程変動を計算します。%工程変動は測定システムの変動と過去の工程変動を比較します。ソースごとの基準変動として計算される%工程変動は、過去の工程変動で割って100を掛けた数になります。デフォルトでは、工程変動は過去の標準偏差を6倍にしたものと等しくなります。

工程変動を推定するために過去の標準偏差を指定する場合、%工程変動は%基準変動と同じため%工程変動は表示されません。

知覚区分数

知覚区分数は、測定した特性の差を検出する測定システムの能力を表すために、ゲージのR&R分析で使用される基準です。知覚区分数は、選択したサンプルで定義される製品変動の範囲内にある重複していない信頼区間の数を表します。また、知覚区分数は、使用中の測定システムが工程データ内で識別できるグループ数を表します。

解釈

Automobile Industry Action Group(AIAG)が発行した測定システム分析マニュアル1では、5つ以上のカテゴリがあれば、許容できる測定システムであるとされています。知覚区分数が5未満の場合、測定システムの分解能が十分でない可能性があります。

通常、知覚区分数が2未満の測定システムは、部品の区別ができないため、工程管理に使用できないと見なされています。知覚区分数が2の場合、部品を「高」と「低」というような2グループにのみ分けることができます。知覚区分数が3なら、データを「高」、「中」、「低」というような3グループに分けることができます。

詳細は、「知覚区分数の使用」を参照してください。

誤判別確率

1つ以上の規格限界を指定すると、製品の誤判別確率を計算できます。ゲージは変動するため、部品を測定した値は、部品の真の値と常に一致するわけではありません。測定値と実際の値の相違は、部品の誤判別につながる可能性があります。

Minitabでは、誤判別の同時確率と条件付き確率の両方を計算します。
同時確率
部品を許容できるかどうかについて事前の情報がない場合は、同時確率を使用します。たとえば、ラインからサンプル抽出を行うときに各部品が良好であるか不良であるかが分からない場合です。起こり得る誤判別は2つあります。
  • 不良品を合格と判別する確率
  • 良品を不合格と判別する確率
条件付き確率
部品を許容できるかどうかについて事前の情報がある場合、条件付き確率を使います。たとえば、再加工対象の製品群からサンプル抽出を行ったり、良品として出荷する予定の製品群からサンプル抽出を行う場合です。起こり得る誤判別は2つあります。
  • 再加工が必要な不良品群からサンプル抽出された部品を合格と判別する確率(誤った合格)
  • 出荷予定の良品群からサンプル抽出された部品を不合格と判別する確率(誤った不合格)

解釈

3人の測定者が10個の部品を3回ずつ測定します。次のグラフは、規格限界と比較して測定値の広がりを示しています。一般に、変動が多く、規格限界に近い部品を多く生産している工程ほど誤判別確率が高くなります。

Gage R&R Study - ANOVA Method

Two-Way ANOVA Table With Interaction

Source DF SS MS F P Part 9 88.3619 9.81799 492.291 0.000 Operator 2 3.1673 1.58363 79.406 0.000 Part * Operator 18 0.3590 0.01994 0.434 0.974 Repeatability 60 2.7589 0.04598 Total 89 94.6471

α to remove interaction term = 0.05

Two-Way ANOVA Table Without Interaction

Source DF SS MS F P Part 9 88.3619 9.81799 245.614 0.000 Operator 2 3.1673 1.58363 39.617 0.000 Repeatability 78 3.1179 0.03997 Total 89 94.6471

Gage R&R

%Contribution Source VarComp (of VarComp) Total Gage R&R 0.09143 7.76 Repeatability 0.03997 3.39 Reproducibility 0.05146 4.37 Operator 0.05146 4.37 Part-To-Part 1.08645 92.24 Total Variation 1.17788 100.00

Process tolerance = 2.5

Study Var %Study Var %Tolerance Source StdDev (SD) (6 × SD) (%SV) (SV/Toler) Total Gage R&R 0.30237 1.81423 27.86 72.57 Repeatability 0.19993 1.19960 18.42 47.98 Reproducibility 0.22684 1.36103 20.90 54.44 Operator 0.22684 1.36103 20.90 54.44 Part-To-Part 1.04233 6.25396 96.04 250.16 Total Variation 1.08530 6.51180 100.00 260.47

Number of Distinct Categories = 4

Probabilities of Misclassification

Joint Probability Part is bad and is accepted 0.037 Part is good and is rejected 0.055
Conditional Probability False Accept 0.151 False Reject 0.073

Gage R&R for Measurement

不良品を合格と判別する同時確率は0.037です。良品を不合格と判別する同時確率は0.055です。

実際は規格外の部品を再検査で合格と判別する誤った合格の条件付き確率は0.151です。実際は規格内の部品を再検査で不合格と判別する誤った不合格の条件付き確率は0.073です。

変動成分グラフ

変動成分管理図は、ゲージのR&R分析の結果のグラフ要約です。

このグラフに表示される変動の要因は、次のとおりです。
  • 合計ゲージR&R:同じゲージを使用する複数の測定者が含まれる測定システムの変動。
  • 繰り返し性:同じ測定者は同じ部品を複数回測定するときの測定値の変動。
  • 再現性:異なる測定者が同じ部品を測定したときの測定値の変動。
  • 部品間:異なる部品によって生じる測定値の変動。

解釈

色付きのそれぞれのバーは次を表します。
%寄与度
%寄与度は、各分散成分と変動全体の割合です。%寄与度は、全変動で割って100を掛けたソースごとに分散成分として計算します。
%基準変動
%基準変動は各ソースと変動全体の割合です。%基準変動は、全変動で割って100を掛けたソースごとの基準変動として計算します。
%公差
%公差は測定システムと規格を比較します。%公差は、工程公差で割って100を掛けたソースごとの基準変動として計算します。
Minitabでは、工程の許容範囲または規格限界を指定するときにこの値を計算します。
%工程変動
%工程変動は測定システムの分散と分散変動を比較します。%工程変動は、過去の工程変動で割って100を掛けたソースごとの基準変動として計算します。
Minitabでは過去の標準偏差を指定してこの値を計算して、分析に部品を使用して工程変動を推定するを選択します。

合格測定システムでは、最大の分散成分が部品間変動です。

Xbar管理図

Xbar管理図は、部品間の変動を繰り返し性と比較します。

Xbar管理図には、次の要素が含まれています。
プロットされた点
各測定者がプロットした部品ごとの平均測定値。
中心線(Xbar)
すべての測定者によるすべての部品の測定値の全体平均。
管理限界(LCLとUCL)
臨界距離は繰り返し性の測定値と平均ごとの測定値の数に基づいています。

解釈

ゲージR&R分析で選択されている部品は、可能性のある部品の範囲全体を表す必要があります。したがって、このグラフは、部品の平均間の分散が、繰り返し性の分散のみから予測される分散よりも大きくなることを示す必要があります。

グラフに、低い分散を持つ測定システムがあることを示す臨界の範囲外の点が多く、臨界距離が狭いのが理想的です。

R管理図

R管理図は、測定者の一貫性を示す範囲の管理図です。

R管理図には、次の要素が含まれています。
プロットされた点
測定者ごとの、部品ごとの測定値の最大値と最小値の差。R管理図では、測定者ごとにデータ点がプロットされているので、各測定者の一貫性を確認できます。
中心線(Rbar)
工程の全体平均(つまり、すべてのサンプル範囲の平均)。
管理限界(LCLとUCL)
サンプル範囲の期待変動量。管理限界を計算するために、Minitabではサンプル内の変動が使用されます。

各測定者が各部品を9回以上測定する場合、R管理図のかわりにSチャートが表示されます。

解釈

平均範囲が小さい場合、測定システムの分散が低いことを示しています。上側臨界境界(UCL)より高い点は、測定者の部品測定に一貫性がないことを示します。UCLの計算に、各測定者による部品ごとの測定値数と部品間の変動が含まれています。測定者の部品測定に一貫性がある場合、基準変動を基準にして最大と最小の測定値の範囲は小さくなり、データ点は臨界内にあります。

1つの因子別(部品別)グラフ

部品別グラフでは、すべての測定値が部品別に表示され、部品間の差を調べることができます。ゲージR&R分析では通常、測定者別および部品別に測定値が表示されますが、拡張ゲージR&R分析では、その他の因子をグラフ化できます。

グラフでは、ドットは測定値を表し、マルバツ記号は平均を表します。結線は因子水準ごとの平均測定値をつなげます。

水準あたりの観測数が9を超えると、個別値プロットの代わりに、箱ひげ図が表示されます。

解釈

個々の部品ごとの複数の測定値が可能な限り最小に変動する(1つの部品のドットが近似する)場合、測定システムの分散が低いことを示します。また、部品の平均測定値部品は、工程の範囲全体を表していることを十分に示すほど変動します。

1つの因子別(測定者別)グラフ

測定者別グラフでは、すべての測定値が測定者別に表示され、測定者間の差を調べることができます。ゲージR&R分析では通常、測定者別および部品別に測定値が表示されますが、拡張ゲージR&R分析では、その他の因子をグラフ化できます。

測定者あたりの観測数が10未満の場合、箱ひげ図の代わりに、個別値プロットが表示されます。

解釈

全測定者にわたるまっすぐな水平線は、測定者ごとの平均測定値が似ていることを示しています。測定値が等しい量で測定者ごとに変化することが理想的です。

交互作用(測定者*部品)グラフ

測定者*部品の交互作用グラフには、各部品に対する測定者ごとの平均測定値が表示されます。ゲージR&R分析には通常、測定者と部品の交互作用が含まれていますが、拡張ゲージR&R分析では、その他の交互作用をグラフ化できます。

交互作用プロットには、2つの因子間の交互作用が表示されます。交互作用は、ある因子の効果は第2因子に依存する場合に発生します。このプロットは、分散分析表の交互作用項のF検定をグラフ表示したものです。

各線は、単一の測定者(または指定した項)の平均値をつないでいます。

解釈

線が一致する場合、測定者の測定が類似していることを示しています。並行ではないまたは交差する線は、一貫して部品を測定する測定者の能力は測定されている部品によって変わることを示しています。線が他の線よりも一貫して高いまたは低い場合、測定者は、一貫して高くまたは低く測定することによって偏りを測定値に追加することを示しています。

1 Automotive Industry Action Group (AIAG) (2010) 『Measurement Systems Analysis Reference Manual, 4th edition』(Chrysler, Ford, General Motors Supplier Quality Requirements Task Force)