変数抜取検査(作成・比較)のすべての統計量およびグラフ

変数抜取検査計画で使用されるすべての統計量およびグラフの定義と解釈について解説します。

ロット品質

変数抜取検査計画のロット品質の単位は、不良品の数によって異なります。
不良率(%)
不良品のパーセンテージを0~100の値として表します。たとえば、サンプルサイズ500のうち10個が不良品の場合、不良率は2です。
不良率(比率)
不良品の比率を0~1の値として表します。たとえば、サンプルサイズ500のうち10個が不良品の場合、不良品の比率は0.02です。
100万個あたりの不良品数
不良品の水準を100万個あたりの値として表します。たとえば、100万個あたりの不良品数(DPM)10の場合、不良品が100万個ごとに10個あることになります。

下側規格限界(LSL)と上側規格限界(USL)

下側規格限界(LSL)とは、製品またはサービスに許容される最小値です。この限界値は、工程がどのように実行されているかを示すものではなく、どのように実行されるのが望ましいかを示すものです。

上側規格限界(USL)とは、製品またはサービスに許容される最大値です。この限界値は、工程がどのように実行されているかを示すものではなく、どのように実行されるのが望ましいかを示すものです。

変数抜取検査計画では、少なくともいずれかの規格限界を指定する必要があります。

解釈

LSLとUSLを使用して、顧客の要件を定義し、工程で要件を満たす項目が製造されるかどうかを評価します。

Minitabは工程データを規格限界と比較して、ロット全体を合格または不合格にするかを判断します。

標準偏差の経験値

標準偏差の経験値は、工程の既知の標準偏差です。標準偏差の経験値は、長期間にわたって十分なデータを集め、工程の標準偏差を高い信頼度で表せる場合に使用します。工程が安定していて管理されている場合、標準偏差を計算する代わりに標準偏差の経験値を使用できます。

ロットサイズ

ロットサイズとは、ロット全体の合格/不合格を判断する場合にサンプルを収集する母集団です。

ロットサイズは、供給業者と消費者双方にとって発送と取り扱いに便利になるように選ばれることもよくあります。たとえば、配送全体が便利なロットサイズの場合もあります。抜取計画ではロット内の部品が同種であることを前提としているので、ロットの構成品は同じ工程条件下で生産される必要があります。また一般にロットが大きくなると、一連の小さなロットを検査するより経済的に検査ができます。

合格品質水準(AQL)と不合格となる品質水準(RQLまたはLTPD)

合格品質水準 (AQL)
合格品質水準(AQL)とは、合格と見なされる供給業者の工程からの最高不良率です。 AQLは抜取計画で合格とされる水準を示し、RQLは抜取計画で不合格とされる水準を示します。 ほとんどの場合、AQLでは特定の製品ロットが合格になるような抜取計画が作成されます。
たとえば、マイクロチップが入荷し、AQLが1.5%であるとします。常に正しい判断が行われるとは限らないと分かっているため(抜取リスク)、生産者のリスク(α)を0.05に設定します。これは、不良率が1.5%以下のロットを正しく合格と判定する確率が約95%であり、不良率が1.5%以下のロットを誤って不合格と判定する確率が5%であることを意味します。
不合格となる品質水準 (RQLまたはLTPD)
不合格となる品質水準(RQL)とは、消費者が個々のロットで許容する最高不良率です。 RQLは抜取計画で不合格とされる水準を示し、AQLは抜取計画で合格とされる水準を示します。 ほとんどの場合にRQLの製品ロットを不合格にする抜取計画を作成できます。
たとえば、マイクロチップが入荷し、RQLが6.5%であるとします。常に正しい判断が行われるとは限らないと分かっているため(抜取リスク)、生産者のリスク(β)を0.10に設定します。これは、不良率が6.5%以上のロットを不合格とする確率が90%以上であることを意味します。最大10%の確率で、不良率が6.5%以上のロットを合格とすることになります。

解釈

消費者と供給業者は、合格と判定される最高不良率(AQL)に同意する必要があります。消費者と供給業者は、消費者が個々のロットで許容する最高不良率(RQL)に同意する必要があります。

AQL(100万個あたりの不良品数100)の合格確率は0.95、不合格確率は0.05です。RQL(100万個あたりの不良品数300)の合格確率は0.10、不合格確率は0.90です。
方法 下側規格 (LSL) 0.09 標準偏差の経験値 0.025 ロットサイズ 2500 合格品質水準 (AQL) 100 生産者リスク (α) 0.05 不合格となる品質水準 (RQLまたはLTPD) 300 消費者リスク (β) 0.1

生産者リスク(α)と消費者リスク(β)

抜取検査では、ロットから抜き取った1つのサンプルの検査結果に基づいて、そのロット全体の合格または不合格を決定します。ロットを合格または不合格にする決定は、ロット全体のデータではなく、1つのサンプルに基づいて決定されるため、良好ロットを不合格にし(生産者リスク)、不良ロットを合格にするリスク(消費者リスク)があります。
生産者リスク (α)
生産者リスクαとは、品質水準が合格とすべきAQL以上のロットを不合格にする確率です。αが大きくなるにつれ、不良率がAQLに等しいロットを不合格にするリスクが大きくなり、生産者に損害を与えることになります。生産者リスクは第1種過誤とも呼ばれます。
1 – αは、AQLでロットを合格にする目標の確率を表します。
消費者リスク (β)
消費者リスクβとは、品質水準が不合格とすべきRQLに等しいロットを合格にする確率です。βが大きくなるにつれ、不良率がRQLに等しいロットを合格にするリスクが大きくなり、消費者に損害を与えることになります。消費者リスクは第2種過誤とも呼ばれます。
βは、RQLでロットを合格にする目標の確率を表します。

解釈

生産者を守るため、合格とすべき品質のロットを不合格にするリスクは低く抑える必要があります。消費者を守るため、品質が低いロットを合格にするリスクは低く抑える必要があります。

AQLでの合格確率は0.95、不合格確率は0.05です。RQLでの合格確率は0.10、不合格確率は0.90です。
方法 下側規格 (LSL) 0.09 標準偏差の経験値 0.025 ロットサイズ 2500 合格品質水準 (AQL) 100 生産者リスク (α) 0.05 不合格となる品質水準 (RQLまたはLTPD) 300 消費者リスク (β) 0.1

サンプルサイズ

抜取検査では、サンプルサイズとは検査する1つのロットからランダムに選び出した項目数です。

解釈

この例では、サンプルサイズは104です。製品ロット全体から104個のサンプルを抽出する必要があります。
生成された計画 サンプルサイズ 104 限界距離 (k値) 3.55750 Z.LSL = (平均 - 下方規格)/標準偏差の経験値 Z.LSLがk以上の場合はロットを合格とし、それ以外の場合は不合格とします。

限界距離(k値)

限界距離とは、Minitabがサンプルロットの合格/不合格を決めるためにサンプル平均および規格限界と比較する値をです。

解釈

たとえば、多数のプラスチックパイプをサンプル抽出するとします。抜取検査計画により、出荷された2500個のパイプから104個をランダムにサンプル抽出する必要があります。パイプの肉厚の下側規格は0.09インチです。Minitabにより限界距離は3.55750と決められました。

Z値が限界距離より大きく、標準偏差が最大標準偏差より大きい場合は、ロット全体を合格にします。それ以外では、不合格にします。
生成された計画 サンプルサイズ 104 限界距離 (k値) 3.55750 Z.LSL = (平均 - 下方規格)/標準偏差の経験値 Z.LSLがk以上の場合はロットを合格とし、それ以外の場合は不合格とします。

最大標準偏差(MSD)

LSLとUSLの両方を指定し、標準偏差の経験値を指定しないと、Minitabでは最大標準偏差(MSD)が計算されます。

解釈

Z値が限界距離より大きく、標準偏差が最大標準偏差より大きい場合は、ロット全体を合格にします。それ以外では、不合格にします。

Z.LSLとZ.USL

Minitabではデータから平均と標準偏差を判断し、Z値が計算されます。標準偏差の経験値を指定すると、Minitabはその値を計算に使用します。
  • Z.LSL = (平均 – 下側規格限界) / 標準偏差
  • Z.USL = (上側規格限界 – 平均) / 標準偏差

解釈

Z値が限界距離より大きく、標準偏差が最大標準偏差より大きい場合は、ロット全体を合格にします。それ以外では、不合格にします。

合格確率と不合格確率

AQLのロットの合格確率は1 – αに近くなります。RQLのロットの合格確率はβに近くなります。不合格確率は単純に1から合格確率を引いたものです。

解釈

AQL(100万個あたりの不良品数100)の合格確率は0.95、不合格確率は0.05です。RQL(100万個あたりの不良品数300)の合格確率は0.10、不合格確率は0.90です。
100万 個あた りの不 不合格 良品数 合格確率 確率 AOQ ATI 100 0.950 0.050 91.1 223.2 300 0.100 0.900 28.6 2261.4

平均出検品質(AOQ)と平均出検品質水準(AOQL)

平均出検品質水準は、不合格のロットの100%が検査され、すべての不良品は交換または再加工されると仮定した場合、入検材料の品質と出検材料の品質の関係を表します。

入検品質が非常に良好または非常に悪い場合は、工程に流れないように不良品の選別と再加工が行われるため、通常、出検品質は良好になります。入検品質が良くも悪くもない場合、出検品質は低下し、不良率は平均出検品質限界(AOQL)である最大値に達します。

平均出検品質(AOQ)および平均出検品質水準(AOQL)を計算するために、ロットサイズを指定する必要があります。

解釈

この例では、平均入検品質水準が100万個あたりの不良品数100のとき、平均出検品質は100万個あたりの不良品数91.1です。平均入検品質水準が100万個あたりの不良品数300のとき、平均出検品質は100万個あたりの不良品数28.6です。不合格にされたロットは100%検査され、すべての不適合品は交換または再加工されるため、入検品質は出検品質よりも悪くなります。

入検品質水準が100万個あたりの不良品数140.0のとき、平均出検欠陥水準(AOQL)が最も低く(100万個あたりの不良品数104.6)なります。
100万 個あた りの不 不合格 良品数 合格確率 確率 AOQ ATI 100 0.950 0.050 91.1 223.2 300 0.100 0.900 28.6 2261.4
平均出検品質限界 (AOQL) 100万個あ たりの不 AOQL 良品数 104.6 140.0

ATI

ロットあたりの平均検査数(ATI)は、不合格ロットの100%が検査されると仮定した場合の、入検材料の品質と平均検査対象数の関係を表します。

ATIを計算するにはロットサイズを指定する必要があります。

解釈

この例では、平均入検品質水準が100万個あたりの不良品数100のとき、ロットあたりの平均検査数223.2です。これは、104個を検査してロットが合格する確率が95%、ロットを不合格にして2,500個すべてを検査する確率が5%だからです。平均入検品質水準が100万個あたりの不良品数300のとき、ロットあたりの平均検査数は2261.4です。これはほぼ配送全体になります。
100万 個あた りの不 不合格 良品数 合格確率 確率 AOQ ATI 100 0.950 0.050 91.1 223.2 300 0.100 0.900 28.6 2261.4

OC曲線

検査特性(OC)曲線は、品質の良いロットと悪いロットを区別するための抜取検査計画の能力を表します。OC曲線は、各抜取計画の入検品質水準が異なるロットの合格確率をプロットします。

解釈

この例では、100万個あたりの実際の不良品が100個の場合、サンプルに基づいたこのロットの合格確率は0.950、不合格確率は0.050です。100万個あたりの実際の不良品が300個の場合、このロットの合格確率は0.100、不合格確率は0.900です。

AOQ曲線

平均出検品質(AOQ)曲線は、不合格ロットの100%が検査され、不良品の交換または再加工後にもう一度検査(修正検査)されると仮定した場合の、入検材料の品質と出検材料の品質の関係を表します。

解釈

この例では、平均入検品質水準が100万個あたりの不良品数100のとき、平均出検品質は100万個あたりの不良品数91.1です。平均入検品質水準が100万個あたりの不良品数300のとき、平均出検品質は100万個あたりの不良品数28.6です。不合格にされたロットは100%検査され、すべての不適合品は交換または再加工されるため、入検品質は出検品質よりも悪くなります。

入検品質水準が100万個あたりの不良品数140.0のとき、平均出検欠陥水準(AOQL)が最も低く(100万個あたりの不良品数104.6)なります。

ATI曲線

平均検査数(ATI)曲線は、不合格ロットの100%が検査され、不良品は交換または再加工後にもう一度検査(修正検査)されると仮定した場合の、入検材料の品質と検査が必要な項目数の関係を表します。

解釈

この例では、平均入検品質水準が100万個あたりの不良品数100のとき、ロットあたりの平均検査数223.2です。これは、104個を検査してロットが合格する確率が95%、ロットを不合格にして2,500個すべてを検査する確率が5%だからです。平均入検品質水準が100万個あたりの不良品数300のとき、ロットあたりの平均検査数は2261.4です。これはほぼ配送全体になります。

合格領域プロット

合格領域プロットは、サンプル要件を示すために使用されます。既知の上側規格と下側規格があり、標準偏差が不明な場合は、合格領域プロットでサンプル平均とサンプル標準偏差から成る領域を確認できます。

解釈

サンプルの標準偏差が増加して最大値に近づいている場合、商品を合格とするには平均が目標値と等しくなっている必要があります。工程変動が少なく標準偏差が小さい場合、平均値が規格限界内で変動していても構いません。

この例では、3600個のローラーから259個をサンプルとして取ります。サンプル平均が規格限界の中心にある場合、工程は最大標準偏差0.002753を受け入れることができます。サンプル平均が一方の規格限界に近くなると、ロットの合格に必要な品質を維持するには変動(標準偏差)がより小さくなる必要があります。最悪なケースは、平均が規格限界と等しい場合です。この場合、標準偏差は0になる必要がありますが、それは不可能です。